防犯カメラ・監視カメラの最低被写体照度について

防犯カメラ・監視カメラを防犯目的で設置する場合には、24時間昼夜を問わず安定して撮影できる必要があります。
照明の無い暗所や夜間帯に防犯カメラで安定して撮影する為には、カメラ本体の最低被写体照度の値は重要な要素です。
こちらのページでは、防犯カメラ・監視カメラの最低被写体照度について解説します。

最低被写体照度について

最低被写体照度とは、カメラが被写体を映すために最低限必要な照度(明るさ)のことで、単位はLux(ルクス/略記号:lx)で表します。この数値が小さければ小さいほど、暗い場所でも撮影できることを意味します。よくルーメン(lm)やカンデラ(cd)との違いを聞かれますが、ルーメン(Lm)は、光源から放たれたすべての光「光束」の量を表す単位で、すべての方向に発せられる光の総量を表し、照明器具の明るさ性能を表すのに使われます。カンデラ(cd)は、光源から出る光の強さ「光度」を表す単位で、ある角度から光を見た時の強さを表す為、車のヘッドライトなどで、ピンポイントの明るさが必要な照明器具の性能を表すのに使われます。ルーメンとカンデラがそれぞれ照明器具から発せられる光の強さを表すのに対して、ルクス(Lux)は、照らされた場所に、どれだけ光が入っているかを表します。つまり最低被写体照度は、カメラで撮影をする際、「どれだけの光が入っている場所=照度」であれば、撮影ができるかを示す指標となります。その為、防犯カメラの機種選定をするうえで、最低被写体照度は重要なポイントとなります。

また、防犯カメラ・監視カメラの設置場所は様々な環境が想定されます。それぞれの環境がどれぐらいの明るさなのかを知ることも大切です。
下記に各環境と照度の目安表をご用意しましたので、大まかな目安として下さい。

照度(Lux)と明るさの目安

照度(Lux) 環境目安
100,000Lux 晴天時
30,000~70,000Lux 薄曇り
10,000~30,000Lux 雨曇り
10,000~20,000Lux 日陰または青空光
3,000Lux 夜間、スタジアムなどの明るい施設
500~1,000Lux 一般的な商業施設内や事務所内など
100~500Lux 晴天時の日没時
150~200Lux 夜の繁華街
50~100Lux 夜間、外灯下
5~30Lux 夜間、屋外駐車場など
1~15Lux 夜間、道路など
1Lux 1m離れたロウソクの明かり
0.2Lux 満月の夜
0.02Lux 三日月の月明り
0.007Lux 闇夜
0.0003Lux 星明かり

警察庁「安全・安心まちづくり推進要綱」のよる照度基準

警視庁では「安全・安心まちづくり推進要綱」を制定し、各場所別に応じて、こまかく照度基準が定められています。
すべての環境がこの照度基準を満たしている訳ではありませんが、各場所別でのおおよその照度目安にはなります。
なお、記載されている各照度は歩道などの水平面の明るさである水平面照度を表しており、人の顔など鉛直面上の明るさである鉛直面照度とは異なります。その為、実際の照度は1/5程度低く見積もった方が良いでしょう。

道路   3Lux以上
公園・公衆トイレ 公園内 3Lux以上
公衆トイレ周辺 50Lux以上
駐車・駐輪場 駐車場
(500㎡以上)
車路 10Lux以上
駐車エリア 2Lux以上
駐車・駐輪場 3Lux以上
共同住宅 共用玄関の内側
共用メールコーナー
共用玄関の存する階のエレベータホール
エレベータ内(かご内)
50Lux以上
共用玄関の外側
共用玄関以外の共用出入口
共用玄関の存する階以外のエレベータホール
共用廊下・共用階段
20Lux以上
自転車置場・オートバイ置場
駐車場
歩道・車道などの通路
児童公園
広場または緑地など
3Lux以上

最低被写体照度の選定基準について

では、実際、どの程度の最低被写体照度があれば撮影できるのでしょうか。
まず、防犯カメラ・監視カメラで暗所や夜間撮影する為には、被写体の照度が防犯カメラの最低被写体照度を上回る必要があります。
ただし、カメラを設置する場所の照度と設置するカメラの最低被写体照度がほぼ同じ数値の場合、映像は映るかも知れませんが、それがはっきりと映るとは限りません。
防犯カメラの役割は、犯罪の抑止はもちろんのこと、事故や犯罪が発生した際、その状況をしっかりと撮影・記録することが求められます。その為、何となく映れば良い訳ではなく、暗い場所や夜間帯でもしっかりと撮影できることが求められます。このような理由から、実際に映したい環境の照度から5~10倍程度の最低被写体照度(照度3Luxなら最低被写体照度0.3Lux以上)で撮影できるように、余裕をもった最低被写体照度の防犯カメラを選定することをお薦めします。

また、近年の防犯カメラは、高画質化だけでなく、高感度化も進んでおり、さらに赤外線や白色LEDによる補助照明の能力も向上しています。外灯がある環境であれば、高感度カメラでも十分な撮影ができることも増え、超高感度カメラでは月明りでの撮影にも対応します。夜間でもフルカラーで低照度撮影ができるカメラもあったります。
赤外線や白色LEDによる補助照明があれば、真っ暗闇(0Lux)でも照明が届く範囲内であれば撮影ができますので、防犯カメラの夜間監視能力を飛躍的に高めてくれます。その為、近年の防犯カメラは、ほぼ赤外線または白色LEDによる補助照明機能が備わっています。また、白色LED搭載モデルでは、夜間でも白色LED光源によるフルカラー撮影ができる防犯カメラもラインナップしています。

赤外線や白色LEDなどの補助照明を照射させたくない場合や防犯カメラを目立たせたくない場合などを除き、夜間監視をしっかりと行いたい場合には、補助照明を搭載した防犯カメラを選定いただくのがお薦めです。

最低被写体照度について注意しておきたいこと

【レンズのF値について】
カメラの最低被写体照度は【0.001Lux/F1.4】のように記載されています。この"/F1.4"の部分は装着するレンズのF値を表し、F1.4以下のレンズを装着して撮影したときに、この最低被写体照度で撮影ができる、という意味です。F値がその数値以上に高いレンズと組み合わせた場合には、最低被写体照度も大きくなります。(暗い場所に少しずつ弱くなります)

※レンズのF値とは、光がイメージセンサーにあたる量を意味します。
Fの値が小さいとレンズを通る光の量は多くなり、F値が大きいとレンズを通る光は少なくなります。F値が小さいほどレンズは明るくなり、高感度撮影が可能になります。また、バリフォーカルレンズやズームレンズの場合、望遠にすればするほどF値は大きくなり、広角にすればするほどF値は小さくなります。基本的にレンズに記載されているF値は最小値を記載してある為、カメラのレンズで【f2.8mm~12mm/F1.4】と記載れている場合、最も広角にした場合にF1.4となり、望遠時にはF値が上がる=感度が落ちることになります。

【電子感度アップ機能の影響】
防犯カメラ・監視カメラの機能で「電子感度アップ機能」(デジタルスローシャッター機能 / DSS機能 / Sens-up機能などとも呼ばれています)という機能がありますが、この機能は、カメラのシャッタースピードを遅くすることで、光センサーが受け取る光の量を増やし、カメラの感度を2倍、3倍...10倍と高めることができる機能です。
微量の明りを大幅に増幅させて撮影を行える為、赤外線投光器を使用した防犯カメラによる監視と比べて全体的に明るく監視が可能となりますが、反面、シャッタースピードを遅くして撮影を行う為、感度を上げすぎると動きの速い被写体では残像が残ります。天体観測や動きの少ない被写体の場合、抜群の効果を発揮するのですが、撮影対象(動きの速い被写体など)によっては使い物にならない映像になることがあります。最低被写体照度が極端に低いカメラでは、電子感度アップ後の最低被写体照度を記載しているケースもありますのでご注意ください。