防犯用録画機器 DVRやNVRについて

防犯カメラ・監視カメラは基本的に「映す」だけです。せっかく映した映像も、しっかりと録画できなければ意味がありません。
そんな防犯カメラの録画に最も適している防犯用録画機器。防犯用録画機器の選定は防犯カメラの選定と同じく重要な要素となります。
こちらのページでは防犯用録画機器を選定する際のポイントや知っておきたいことを解説します。

防犯用録画機器の種類

防犯カメラ・監視カメラの録画機器には下記の種類があります。

デジタルビデオレコーダー(略語:DVR)

同軸カメラ用の録画機器です。録画媒体はHDDが基本となり、SDカードやSSDを採用したモデルもあります。また、同軸カメラには6種類の映像フォーマットがある為、設置する防犯カメラの映像フォーマットに対応したDVRを選定する必要があります。対応していない映像フォーマットのカメラは入力ができませんので、必ず映像フォーマットが使用カメラと同一であるかどうか、使用カメラの出力解像度に対応してるかどうかを確認した上で機種を選定しましょう。XVRやハイブリッドレコーダーなどと呼ばれるモデルの場合、複数の映像フォーマットに対応し、ネットワークカメラ・IPカメラの接続(登録)に対応したモデルもあります。

ネットワークビデオレコーダー(略語:NVR)

ネットワークカメラ・IPカメラ用の録画機器です。DVRと同様に録画媒体はHDDが基本となり、SDカードやSSDを採用したモデルもあります。NVRはネットワークカメラ・IPカメラの録画に最適化され、遠隔監視等のネットワークを使用した防犯録画システムに最適です。また、カメラの接続台数(登録台数)やHDDの搭載数が多いモデルがラインナップしていることから、中規模から大規模向けの防犯録画システムを組むのに適しています。
ネットワークカメラ・IPカメラ製品にはネットワークカメラ製品同士に互換性を持たせるための規格標準化フォーラムであるONVIFという規格があります。この規格に準拠した製品同士では互換性があり、メーカーが異なる場合でも接続(登録)が可能になりますが、すべての機能が利用できないケースも多く、基本的には同一メーカー製品で組むことをお薦めしています。

動画圧縮方式

動画データは画像ファイルや音声ファイルなどと比べてデータサイズが大きい為、 動画データをそのままの状態で保存したり、ネットワークで映像を伝送した場合、ストレージの圧迫やネットワーク回線に大きな負担をかけてしまいます。その為、動画は基本的に圧縮を行い、データ量を削減して保存、伝送します。

動画を圧縮する際の動画圧縮方式には様々な方式がありますが、圧縮方式の違いにより画質やデータサイズが変わりますので、動画圧縮方式はとても重要になります。また、近年では、防犯カメラ映像の高画質化が進んでおり、それに比例して動画データのデータサイズも大きくなっています。その為、高画質で長期間録画ができるように、高画質・高圧縮が可能な動画圧縮方式に対応した機器を選定しましょう。防犯カメラ・監視カメラで録画、ネットワーク伝送に使用されている主な動画圧縮方式には、下記の種類があります。

M-JPEG

Motion-JPEGとも呼ばれており、JPEG画像を順々に表示して動画とする方式です。 M-JPEGのメリットは、JPEG画像に圧縮する以外の圧縮がなく、画質が劣化しないというメリットがあります。一方で、動画としてのデータ圧縮ができず、他の動画圧縮方式に比べて、同画質の画像を生成するのにM-JPEGの方がデータサイズが大きくなるというデメリットがあります。

MPEG-4

携帯電話や電話回線などの通信速度の低い回線を通じた、低画質、高圧縮率の映像の配信を目的とした圧縮方式です。フレーム間符号化という方法を使用してデータ量の削減を行い、動画と音声合わせて64kbps程度の通信ができるような圧縮方式です。高ビットレート化が進んでいる近年では不向きな動画圧縮方式となりました。

H.264

近年の防犯カメラでよく使われている動画圧縮方式です。MPEG-4 Part 10 AVC(Advanced Video Coding)とも呼ばれており、MPEG-4と同じくフレーム間符号化を使用してデータ量を削減します。H.264は画質を損なうことなく動画のデータサイズを削減でき、M-JPEGと比較して80%以上、MPEG-4と比較すると2倍程度の圧縮率となります。防犯カメラでは2000年代後半から採用されることが増え、現在は後述のH.265と同様に最も使われている動画圧縮方式です。

H.265

H.265は、HEVC(High Efficiency Video Coding)とも呼ばれており、最新の動画圧縮方式です。現在、H.265は圧縮技術の適正化が進められており、H.264と比べて約2倍の圧縮能力を備えています。H.265はH.264の半分のファイルサイズ・ビットレートで同等の画質を実現でき、携帯端末向けの動画フォーマットに利用が開始され始めています。また、H.264に比べて4Kや8Kまでの超解像度に対応しており、高フレームレートにも対応します。近年の防犯カメラで主流な動画圧縮方式です。

防犯カメラの主流はH.264/H.265

近年の防犯カメラにおいて、動画圧縮方式の主流はH.264とH.265になります。M-JPEGはモデルによっては使用できる場合もありますが、MPEG-4はMPEG-4が進化した動画圧縮方式がH.264なので、まず使われていません。近年発売されているDVR、NVRはH.264/H.265の動画圧縮方式に対応し、動画圧縮方式を切り替えることができるモデルも多く、動画圧縮方式はH.264以上、できれば両対応のモデルを選定することをお薦めします。

録画解像度

DVR、NVRには、その機種で録画ができる最大録画解像度があります。例えば、最大録画解像度が「1920×1080」と記載されているDVR、NVRに、出力解像度が「2560×1440」のカメラを接続した場合、カメラの出力解像度を下げなければ入力や録画ができないといった事態が発生します。また、一部のモデルでは、入力解像度は高解像度に対応していても、録画解像度がその解像度に対応していない場合があります。例として、入力は4K解像度(3840×2160)で入力ができても、録画は2MP解像度(1920×1080)までしかできないモデルがあったりします。そうなると、せっかく4K解像度で撮影をしているのに、録画は2MP解像度になってしまうことになります。使用するカメラの出力解像度でしっかりと録画ができるDVR、NVRを選定するようにしましょう。

防犯カメラの解像度については、【防犯カメラの​画素数と​解像度、​画質に​ついて 】のページもご参考になさって下さい。

録画画質と録画フレームレート

防犯カメラを録画する際、証拠能力を高める為には十分な画質で録画でき、できるだけ長期間録画保存できることが求められます。

防犯カメラを長期間録画する為には、H.264やH.265などの高圧縮の動画圧縮方式を選ぶこと、必要録画期間に応じたHDD容量を搭載すること、そして録画解像度、録画画質、録画フレームレートを調整して、動画データ自体を小さくすることで長期間録画を行います。とにかく高画質で長期間録画したい、という場合には、手っ取り早くHDD容量を大容量化させる方法が一番ですが、それだけコストがかかってしまいますので、一般的には録画解像度、録画画質、録画フレームレートを調整してデータ量を抑えるようにします。

その中で、録画解像度を下げるということは、例えば4K解像度(3840×2160)のカメラ映像を2MP解像度(1920×1080)で録画することを意味します。録画解像度を下げることでデータ量の削減効果は大きいのですが、せっかく4Kで撮影できるのに2MPでの録画になってしまい、高解像度カメラを導入した意味がなくなってしまいます。その為、まずは録画画質(ビットレート)を下げるか、録画フレームレートを下げることが優先されます。

ビデオコンテンツを制作する場合には、臨場感があり、滑らかな動画撮影ができるように高画質でフレームレートの高い製品が求められます。ぬるぬる動く、といった表現を使われる動画がありますが、あれは60FPSや120FPS以上の高フレームレートで撮影した動画です。一方、防犯カメラの場合、臨場感を求められる訳でもなく、滑らかな動画が求められる訳でもありません。十分な画質で、より長期間録画できることが大切です。このことから、まずは録画フレームレートを下げ、次に録画画質(ビットレート)を下げて調整します。では、実際、どれぐらいの録画フレームレートがあれば問題無いのでしょうか。4MP防犯カメラで30FPS / 10FPS / 4FPS / 1FPSで実際に録画をした比較動画を用意しましたので、ご参考になさってください。

フレームレートとは

フレームレートは撮影・録画した動画が【1秒あたり何枚の静止画を映しているか】を表しています。FPS(frames per second)の単位で表され、30FPSなら、1秒間に30枚の静止画が映されています。フレームレートが高いと動画が滑らかになり、低いとカクカクしたコマ送りのような映像になります。映画は24FPS、テレビは30FPS、最近の4K放送やゲームは60FPSが標準的となっています。

防犯カメラ フレームレートの違い

こちらの動画は同じ4MPカメラを使って30FPS、10FPS、4FPS、1FPSで録画をした動画です。
30FPS(左上)の動画はいわゆるフル動画なので滑らかに録画できています。10FPS(右上)の動画もそこまで違和感が無いと思います。4FPS(左下)では、動画にカクツキは出てしまいますが、車や人の動きなどはしっかりと録画できています。1FPS(右下)の映像はフレーム間の間隔が長く、映像が飛び飛びとなっています。ちなみに、どのフレームレートでも画質自体はまったく変わらないもポイントです。

弊社が正会員として加入している【公益社団法人 日本防犯設備協会】では、防犯カメラの録画フレームレートは4FPS以上あれば十分な証拠能力があるとして、4FPS以上の録画を推奨しています。動画を比較してみてもお分かりいただけると思いますが、4FPSあれば十分な撮影ができていますので、防犯カメラの映像を録画する際は、最低4FPS以上で録画するようにしましょう。

録画解像度や録画画質を下げた場合

データ量を削減する為、録画解像度を下げたり、録画画質(ビットレート)を下げたらどうなるのか、参考動画を用意しました。
こちらの動画は4K防犯カメラの映像を下記条件で実際に録画した動画です。

  • 録画解像度を4K(3840×2160)、ビットレート8192Kbpsで録画した動画
  • 録画解像度を4MP(2688×1520)に下げ、ビットレート4096Kbpsで録画した動画
  • 録画解像度をFull HD(1920×1080)に下げ、ビットレート2048Kbpsで録画した動画
  • 録画解像度 4K(3840×2160)でビットレートを4096Kbpsに下げて録画した動画
  • 録画解像度 4K(3840×2160)でビットレートを2048Kbpsに下げて録画した動画

録画解像度(撮影解像度)を下げた場合、解像度が下がるので画質の劣化具合がかなり大きくなります。録画画質(ビットレート)を下げた場合、ビットレートを8192kbpsから1/2の4096kbpsまで下げた動画では、多少画質が粗くなりますが、劣化具合は比較的小さいです。さすがに1/4の2048kbpsまで下げると粗さが目立ちますが、それでも録画解像度を下げるよりは高画質に録画できます。

録画解像度や録画画質(ビットレート)を下げると画質の劣化具合はそれなりにありますが、録画フレームレートは下げても画質の劣化はありません。よほど動きを重視するケースを除いて、防犯カメラの録画では、まずは録画フレームレートを下げてデータ量を調整し、その後に録画画質(ビットレート)を調整することをお薦めします。

DVR・NVRに備わっている機能

防犯用録画機器であるDVR、NVRには様々な機能が備わっています。機器を選定するうえでポイントとなる主な機能を解説します。

ネットワーク機能

インターネットが当たり前の時代となり、IoT全盛期の近年では、DVRやNVRも当然のようにネットワーク機能が備わるようになりました。NVRはネットワークビデオレコーダーなので、当然ですが…DVRも一部機種以外、ほとんどの機種がネットワーク機能を備えています。DVR、NVRをネットワークに接続することで、遠隔地からパソコンやスマートフォン、タブレットを使用してDVR、NVRにアクセスすることができるので、遠隔地から防犯カメラの映像を確認したり、再生することできます。高機能モデルではCMS(中央管理ソフト)を使用して、複数拠点に設置してあるDVRやNVRを遠隔で一括で管理することもできます。

音声録音機能

防犯カメラを録画する際、映像だけでなく音声も一緒に録画したい、という需要が増えています。音声も重要な証拠となりますので、必要性に応じて音声録音はしたいところです。NVRの場合、接続(登録)したネットワークカメラ・IPカメラに音声マイクが内蔵または接続することで、映像と音声のデータを受信して録画を行いますので、音声入力という概念はありません。一方、DVRの場合は、カメラの入力数よりも音声入力数が少ない機種があったりします。DVRを選定する際で、音声録音をしたい場合には、カメラの入力数と音声入力数をしっかりと確認する必要があります。

UTC機能

同軸カメラ用の録画機器であるDVRには、UTCという機能を備えたモデルがあります。UTCとは、「Up to Coax」の略で、同軸ケーブルなどの映像ケーブルにデータ通信を重畳する機能です。この機能はAHD、HD-TVI、HD-CVIなどのアナログHDカメラ用の機能で、カメラ側とDVR側がUTC機能に対応していれば、DVR側でカメラのメニュー操作や電動バリフォーカルレンズのレンズ調整、PTZ機能モデルの場合は、カメラのパン・チルト・ズーム操作を行うことができます。

PoC機能

同軸カメラ用の録画機器であるDVRの中には、本体にPoC機能を備えたモデルがあります。PoCとは、「Power of Coaxial(Coax)」の略で、同軸ケーブルに映像信号と電源を重畳させることができる機能で、同軸ケーブル1本での配線を可能にします。本来、PoC機能を利用する場合、対応した電源ユニットが必要ですが、PoC機能を備えたDVRは、その電源ユニットを内蔵しています。PoC機能を備えたモデルの場合、PoCに対応した同軸カメラのケーブルを接続することでDVR側から電源供給を行うことができます。また、前項のUTC機能も同時に利用ができ、モデルによっては音声も伝送することができます。注意点として、同じメーカー製品同士でなければ、使用できませんので、必ず同軸カメラとDVRのメーカーは同じメーカー製品で揃える必要があります。

PoC機能については【防犯カメラ・監視カメラの種類について】のページで解説しています。
こちらのページもご参考になさってください。

PoEポート

ネットワークカメラ・IPカメラ用の録画機器であるNVRの中には、本体にPoEポートを備えたモデルがあります。通常、ネットワークカメラの場合、PoEスイッチングハブやACアダプターで電源を供給しますが、NVRのPoEポートに接続することでNVR側から電源供給を行うことができます。さらに、プラグアンドプレイ接続により、接続したネットワークカメラを自動で認識、登録してくれるので、難しい設定不要でネットワークカメラによる防犯録画を簡単に実現できます。ただし、PoEポートは同じメーカー同士の製品でなければ使用できない為、ネットワークカメラとNVRを同じメーカー製品で揃える必要があります。

RAID機能

DVR、NVRの中にはRAIDという機能を備えたモデルがあります。RAIDは「Redundant Arrays of Inexpensive Disks」の略で、複数のHDDを1つのドライブとして管理する技術のことを指します。複数のHDDへデータを分散して記録することにより、高速化や耐障害性の向上が図れます。録画データの冗長性を高めたい場合には、RAID対応モデルを選定することをお薦めします。

RAIDには主に下記の5種類があります。

  障害耐性 最低必要HDD数 最大容量 処理速度
RAID0
(ストライピング)
なし 2台 総容量 最も早い
RAID 1
(ミラーリング)
高い 2台 総容量の半分 最も遅い
RAID 10
(RAID 1+RAID 0)
高い 4台 総容量の半分 速い
RAID 5
(パリティ分散)
高い 3台 総容量のマイナス1台分 普通
RAID 6
(複数パリティ分散)
最も高い 4台 総容量の半分 速い